前回の記事では、日本動物高度医療センターが、普通の動物病院ではなく、かかりつけ動物病院から紹介される専門病院に近い会社だと整理しました。
では、この会社は実際に伸びているのか。
そして、その成長は二次診療というビジネスモデルとつながっているのか。
今回は、売上・利益の推移と、成長の入口になる連携病院数・初診数を見ていきます。
売上も利益も大きく伸びている
結論から言うと、日本動物高度医療センターの直近業績はかなり強いです。
売上高だけでなく、利益も大きく伸びています。

2026年3月期の売上高は6,192百万円。
前期の5,277百万円から、17.3%増えています。
売上高が17%以上伸びている時点で、かなり強い成長です。
ただ、それ以上に目立つのが利益の伸びです。
営業利益:720百万円→1,150百万円 前年比59.5%増加。
経常利益:720百万円→1,142百万円 前年比58.6%増加。
純利益:520百万円→833百万円 前年比60.0%増加。
売上高が17.3%増なのに対して、営業利益・経常利益・純利益はいずれも約6割伸びています。
この数字を見る限り、現状はかなりの高成長と言えるでしょう。
さらに、営業利益率も13.7%から18.6%へ上昇しています。
営業利益率の改善にも注目したいところです。
売上が伸びたことはもちろんですが、それだけでは利益率の上昇を十分に説明できません。
価格改定や診療受け入れ能力の拡大、業務効率化など、複数の要因が利益率改善に寄与していると考えられます。
この利益率改善の中身については、次の記事で詳しく見ていきます。
まずこの記事では、その前提となる「症例を集める力」が伸びているのかを確認します。
二次診療ビジネスの入口になる、連携病院数と初診数です。
まず見るべきは、連携病院数
日本動物高度医療センターを見るうえで、まず確認したいのは連携病院数です。
理由は、この会社がふらっと来院するタイプの動物病院ではないからです。
日本動物高度医療センターは、かかりつけ動物病院から紹介された症例を受け入れる二次診療の病院です。
人間でいうと、町のクリニックから紹介されて行く大学病院や専門病院に近い存在です。
つまり、どれだけ高度な医療設備があっても、どれだけ専門的な獣医師がいても、かかりつけ動物病院から紹介されなければ症例は集まりません。
だから、二次診療の会社にとって、連携病院数はかなり重要です。
連携病院数は、単なる営業先の数ではありません。
症例が入ってくる入口です。
この入口が広がっているかどうかを見ることで、将来の症例流入の土台が広がっているかを確認できます。

日本動物高度医療センター2026年3月期決算説明資料より抜粋。
決算資料を見ると、連携病院数は増加基調にあります。
2026年3月期末の連携病院数は4,779施設。
前期末から132施設増えています。
連携病院比率は36.6%と全国の小動物診療施設の3分の1以上と繋がっていることになります。
北海道、東北、北陸、中国、四国、九州にまだ病院ができていない中で、全国の3分の1以上の一次診療の病院と連携できているのは、非常に順調に見えますね。
右肩上がりのグラフを見ても一目瞭然でしょう。
次に見るのは、初診数
次に見るべきは、初診数です。
連携病院数が増えていても、それが実際の紹介につながっていなければ売上にはつながりません。
連携先が増えた。
でも、実際には紹介される症例が増えていない。
この状態だと、ネットワークの広がりが売上成長につながっているとは言いにくいです。
そこで確認したいのが初診数です。
初診数は、新しく紹介されてくる症例の入口を見る数字です。
連携病院数が増え、初診数も増えているなら、紹介ネットワークは実際に機能していると言えるでしょう。
一方で、連携病院数は増えているのに初診数が伸びていないなら、ネットワークの広がりがまだ実際の症例流入につながっていない可能性があります。
つまり、この会社を見るときは、連携病院数と初診数をセットで確認する必要があります。

日本動物高度医療センター2026年3月期決算説明資料より抜粋。
2026年3月期の初診数は10,953件。
前期比で9.2%増えています。
通期計画に対しても103.7%の達成率でした。
通期計画も上振れで着地していますし、良いのではないでしょうか。
連携病院数が増えているだけでなく、実際に新しく紹介される症例も増えています。
つまり、
- 連携病院数が増える。
- 紹介される症例が増える。
- 初診数が増える。
この流れが確認できます。
ここまで見る限り、二次診療モデルの入口はしっかり機能しているように見えます。
紹介ネットワークは、簡単には真似しづらい
連携病院数と初診数が伸びていることは、日本動物高度医療センターの強みを考えるうえでも重要です。
紹介ネットワークは、一朝一夕には作れないからです。
設備だけなら、資金力のある企業が後から導入することもできます。
CTやMRI、手術室、入院設備などは、もちろん大きな投資が必要です。
ただ、資金があればある程度はそろえられます。
しかし、地域のかかりつけ動物病院から信頼され、必要なときに紹介してもらえる関係は、すぐには作れません。
紹介してもらうには、診療実績が必要です。
難しい症例を受け入れ、適切に検査・治療し、かかりつけ医へ情報を返す。
その積み重ねが、次の紹介につながります。
つまり、この会社の強みは、単に高度な設備を持っていることではありません。
連携病院から症例が集まる。
症例を診ることで、実績とノウハウが積み上がる。
その実績が信頼につながる。
さらに紹介されやすくなる。
この循環、仕組みが競合に対する強みと言えるでしょう。
資金力のある企業が参入して大幅に安い金額で提供できるような価格破壊が起きても、ペットという家族の命に関わることなので、多くの実績を持つ日本動物高度医療センターの信頼が揺らぐことはないでしょう。

症例を集める力は順調に見える
ここまで見てきたように、日本動物高度医療センターの「症例を集める力」は順調に推移しているように見えます。
二次診療の病院にとって、連携病院数は症例が入ってくる入口です。
その連携病院数が増えており、さらに実際に紹介される症例を示す初診数も伸びています。
つまり、かかりつけ動物病院とのネットワークが広がり、それが実際の症例流入にもつながっていると考えられます。
ただし、症例が集まるだけでは十分ではありません。
集まった症例を受け入れる体制がなければ、売上にはつながりません。
高度医療には、専門獣医師、医療設備、手術室、入院設備などが必要です。
紹介される症例が増えても、それを診られる人材や設備が足りなければ、診療受け入れ能力には限界があります。
次に確認すべきなのは、需要があるかどうかではなく、その需要を受け入れるキャパを広げられているかです。
次回は、利益率改善の中身を整理したうえで、獣医師数・設備投資・診療体制強化によって、受け入れ能力を拡大できているのかを見ていきます。




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